東京地方裁判所 昭和51年(モ)9256号 判決
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【判旨】
2 次に、債権者らが昭和四九年債務者ほか一名を被告として当庁に提起した昭和四九年(ワ)第一一三八号損害賠償請求事件が本件仮差押事件の本案訴訟に当たる旨の債権者らの主張について検討する。
保全処分としての仮差押は、本案訴訟によつてその存否が終局的に確定される金銭債権について将来における強制執行を保全することを目的とするものであるから、仮差押の被保全権利と本案訴訟の訴訟物とは本来一致するのが望ましいけれども、請求の基礎さえ同一であれば、仮差押事件又は本案訴訟において被保全権利又は訴訟物たる権利を変更して両者を一致させることは可能であるから、両者は必ずしも同一であることを必要とせず、請求の基礎が同一であることを要し、かつ、それをもつて足りると解するのが相当である。
しかるところ、本件仮差押の被保全権利は、債権者らが昭和四六年から昭和四八年八月まで訴外会社に対し売渡した商品の売掛代金債権についての保証債務履行請求権であるのに対し、<証拠>によれば、債権者らが本案であると主張する前記損害賠償請求事件の訴訟物は、債権者らが昭和四七年四月から昭和四八年八月まで訴外会社に対し商品を売渡したり、金員を貸付けたりした売掛代金債権及び貸金債権が同会社の倒産により回収不能となつて生じた損害についての同会社の取締役であつた債務者が商法二六六条の三に基づき負担する損害賠償責任の履行請求権であることが認められる。そうして、右事実によれば、本件仮差押の被保全権利と前記訴訟事件の訴訟物とは、一方は債権者ら債務者間における契約に基づく責任の履行を求めるものであるのに対し、他方は右契約の有無とはかかわりなく、株式会社の取締役について特別に法定された損害賠償責任の履行を求めるもので、両者は発生原因を全然異にし、社会生活関係上の利益も共通にせず、それぞれが別個の紛争であると目されるから、請求の基礎を同じくするものとは言い難い。
したがつて、本件仮差押決定については、債権者から本案訴訟の提起がないことに帰するものというべきである。
(榎本克巳)